英語学習‐詩

英語学習にも使える独創的な7つの詩

“Once upon a midnight dreary, while I pondered, weak and weary…”

こちらはエドガー・アラン・ポーの詩 “The Raven”(邦題:大鴉、おおがらす)の一節。こういった有名な英語の詩は、どこかて耳にしたことがあるという人もいるかもしれません。

翻訳された英語の詩を学校で読んだり、 英語のテレビ番組や映画などで詩が引用されているのを聞いたりすることもありますよね。

そういった詩について、みなさんはどう思いますか?

好みかどうかはさておき、英語の詩は英語のネイティブ向けだなと思われたかもしれません。

けれども、実はそうでもないのです。

詩は、英語学習のためのユニークで強力なツールにもなり得るのです。

今回は、詩を使って英語を学ぶ方法をお伝えするとともに、筆者のお気に入りの現代詩を使った英語学習にさっそく挑戦していただきたいと思います。

英語学習者が詩を読むべき理由とは?

詩を使って英語を勉強すると、スピーキング、リーディング、リスニングなどを様々な方法で上達させることができます。

まず、詩を読めばボキャブラリーが身に付きます。たくさんの新しい単語に出会えるだけでなく、詩に特有のを利用することで、単語が覚えやすくなるのです。

また、詩を読めば言葉選びのアートも学べるでしょう。詩に用いられる韻文は、散文(一般的な書き方の文章)とは大きく異なるもの。詩では、ほんの少しの文章量に強力なメッセージを込めなくてはいけません。そのため、詩人たちは一つ一つの単語をとても慎重に選ぶのです。

詩に使われている単語の選択によく注意してみると、スピーキングにおいてもライティングにおいても、自分の考えを表現するためにベストな英単語を選ぶ方法が学べます

さらには、英詩では単語の発音の強弱やイントネーションにも特別な注意が払われています。英語のスピーキングでこういった側面を伸ばしたい人も、詩を利用すると効果的に学習できるでしょう。

句読点も詩の大切な要素です。句読点は詩を声に出して読んだときの響きを左右し、詩の意味をも変えてしまうことがあります。詩を読むと、句読点の意味することや、その正しい用法なども学べるでしょう。

読解力を高めたいですか?詩人や作家はクリエイティブな技術を使って暗に何かを語るものですが、詩からはこういった英語の文学手法を学ぶことができるのです。文学手法とは例えば、暗喩、寓意、象徴などですね。

こういった手法が使われているのを詩の中で特定できれば、英語でよむ文章のほとんどがこれまで以上に理解しやすくなるはずです。手法が分からないために文字通りに解釈してしまって混乱するなんてこともなくなるでしょう。

上級の学習者にとって英詩は、英語を自由に操れるようになる最高の方法でもあります。英語のルールを破ってもOKなのが詩の良いところ。何かを表現するために文法を上手に破るというのは、英語をマスターすることでもあるのです。

最後に、文学は社会について多くのことを語るため、詩を読むのは英語圏の文化や歴史について深く学べる楽しい方法でもあります。

どんな英詩も語学学習に役立てられるようになる方法

実は詩は単に読んで楽しいだけでなく、もっと色々な可能性を秘めているのです。

  • 蛍光ペンを用意。まず最初に、詩の音の側面において大切だろうなと思う単語に印をつけます。例えば、強調して読むべきだと思う単語、韻を踏んでいる単語など。
  • 詩を聴く。印をつけたら、録音された詩の音声を聴きましょう。リスニングの練習としてだけでなく、自分のつけた印の通りに読まれているか確認するのも良いでしょう。

強調して読むべき単語は当たっていましたか?詩の韻は、自分の予想とどう違いましたか?

英語学習‐詩

この記事でご紹介する詩には、録音された音源も併せて記載しています。英語話者の音声を聴いて学習をするには、FluentUも優れたツールです。FluentUの動画や音声にはインタラクティブな字幕や、語彙リスト、文字起こし全文、フラッシュカードなどの学習ツールが付いています。

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  • 声に出して読んでみる。音声で聞こえた通りに真似をして読んでみましょう。先述の通り、英詩では発音や音の強弱が大切にされているので、詩の朗読は英語を自然に話すためのちょっとしたレッスンにもなるのです。
  • ちょっと頑張って英詩全文を暗記してみましょう!詩には短くてあまり時間をかけずに暗記できてしまう作品も多いものです。これも詩の良いところですよね。

短い詩の暗記は新しいボキャブラリーを身に付ける方法としても最適です。単語とその意味を暗記するだけでなく、単語が使われている文脈を理解しておくことで、より簡単に覚えることができるのです。

  • ペンを持って!最後に、読んだばかりの詩の形式やスタイルを真似して、自分で詩を書いてみるととても効果的な学習ができます。

自分の詩を書くというのは、これまでに学んできたことを総仕上げするための究極の方法でもあります。詩は短いものが多いため、文体の雰囲気もつかみやすいはずです。その文体を真似て、自分の詩を書いてみましょう。

詩の形式は本当に多種多様なので、ネタ切れなんてことには絶対なりませんよ!

英語の勉強にもなる独創的な詩7選

ここまでお伝えしてきた学習戦略を試す準備のできた人は、これからご紹介する7つのモダンな詩を使ってさっそく始めてみてくださいね!

“This Is Just to Say” ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ作

詩の概要

1934年に出版された詩 “This is Just to Say”は、著名なアメリカの詩人、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズによって書かれたもの。

ウィリアムズは、もう一人のアメリカ人詩人、ウォルト・ホイットマンが始めた形式に囚われず詩人の人生を反映した詩をかく運動に感化されました。ウィリアムズはこのアイデアを気に入り、自分の日常生活についての詩を書くようになります。彼は特にアメリカ郊外の生活に興味をもっていたようです。

“This Is Just to Say”は、彼が妻に宛てて冷蔵庫に残したメモを基にして書かれた作品です。そのメモの内容は、妻が後で食べるつもりだったであろうプラムを食べてしまったよと伝えるというもの。

PennSoundではこの詩が読めるだけでなく、ウィリアムズ本人による朗読も聴くことができます。音声にはイントロが入っているので、詩は1:04から始まります。

詩のポイント

この詩に登場するプラムには隠喩などの手法が用いられているのか気になる方もいるのでは?例えば、甘い果物であるプラムの実は、ウィリアムズが他の女性と浮気していることを示唆しているのだと解釈する人も多いものです。

また、この詩には句読点がないことやその他いろんなディティールにも注目したいところです。本来は冷蔵庫に貼られたメモだったというこの詩らしさが残っているのは、こういった細かい部分のおかげなのです。

学習のポイント

この詩は形容詞を特定する練習に使うことができます。プラムが3つの単語で形容されているのですが、これらの形容詞が見つかるかどうかご自身で確認してみてくださいね

また、この詩はものすごく短いので、詩の暗記を初めてするというときにもぴったりです。

さらに、句読点は使われていませんが、ウィリアムズの朗読を聴くことで英語の自然な間の置き方を練習することもできるでしょう。日常に基づいた作品ですから、自然な話し言葉や書き言葉が使われているのです。

間の置き方やイントネーションなど、英語のネイティブスピーカーであるウィリアムズ本人を真似て朗読に挑戦してみましょう。

“The Chaos” ジェラルド・ノルスト・トレニート作

詩の概要

“The Chaos”は、オランダ人の旅人であり作家であるジェラルド・ノルスト・トレニートによって書かれた詩です。

とても人気が高いこの作品には、スペルや発音の難しい英単語がたくさん使われているのが特徴。英語という言語そのものに焦点が当てられているため、英語学習者に最適なのです。

この詩はオンラインで読むことも、下記のYouTubeでは音声を聴くこともできます。ただし、こちらの音声では節がいくつか抜けています。とても長い詩なので、ほとんど全ての音声で一部省略されてしまっているのです。

詩のポイント

この詩のトーンについて考えてみましょう。語り手はおもしろおかしくふざけているのでしょうか?あるいは実際にいらついているのでしょうか?

ぜひ注目したい点は、それぞれの行の終わりに踏まれている脚韻や、単語の頭文字で韻を踏む頭韻です。これら全てが詩全体のトーンに影響を与えているのです。

学習のポイント

この詩は英語の学習者を念頭に置いて書かれているため、もちろん英語学習に適しています。詩の中には発音やスペルを学んでおきたい単語がこれでもかと並べられています。

この詩の目的は、色々なアルファベットの組み合わせや、スペル、発音などを示すことにあります。

それだけでなく、新しいボキャブラリーにたくさん触れられる点もこの詩の魅力ですよ!

“A Pizza the Size of the Sun” ジャック・プレラッキー作

詩の概要

ジャック・プレラッキーは最もよく知られたアメリカの子ども向け現代詩人です。“A Pizza the Size of the Sun”は1996年に同タイトルで出版した詩集の中の作品です。

この詩の内容はまさにそのタイトル通り。語り手はお日様ほどの巨大なピザを作るのです。

PoemHunterからはこの詩を読むことができますが、ここにある音声はコンピューターが読み上げたもので、イントネーションが正しくないためおすすめできません。音声を聴きたい方は、Little Readersによる朗読が聴けるこちらのYouTube動画をご覧ください。

詩のポイント

少し時間をとって、この詩に用いられている隠喩の意味を考えてみましょう。同じことを表現するためには、他にどんな隠喩が使えるか自分で考えてみましょう。

学習のポイント

この詩は子ども向けの英語で書かれているため英語の初心者にもぴったりです。構想がシンプルなだけでなく、比喩やボキャブラリーも理解しやすいのが特徴です。

詩そのものがシンプルで韻も易しいため、暗記の練習にも最適です

また、文体だけ真似をして、他の食べ物についての自分の作品を作ってみても良いかもしれません。詩の中にたくさん登場する食べ物に関するボキャブラリーを使えば、自分の詩を作るときにヒントになってくれるはずですよ。

“We Real Cool” グウェンドリン・ブルックス作

詩の概要

1960年に出版された“We Real Cool”は、おそらくグウェンドリン・ブルックス作品の中では最も有名なもの。

ブルックスは黒人の詩人として初めてピューリッツァー賞を受賞した、才気あふれる作家です。20世紀におけるアフリカ系アメリカ人の現代的な日常生活を描くのが彼女の詩の特徴です。“We Real Cool”の見事な韻はまさに鳥肌ものですよ!

この詩は学校をサボってビリヤード場でつるむ十代の若者たちの視点で書かれています。

Poets.orgではこの作品を読めるだけでなく、ブルックスによる朗読を聴くこともできます。作品のインスピレーションが語られた後、詩の朗読は1:43から始まります。

詩のポイント

短くて韻を踏んだこの詩も暗記に最適です。脚韻だけでなく、“Jazz June”のような頭韻や、“Thin gin”のような母音韻(同じ母音をもつ単語の組み合わせ)などが用いられることで、記憶に残りやすいスムーズで音楽的な詩となっているのです。

こういった詩の響きが、詩の内容にどのような効果を与えていますか?また、詩の語り手にとって、より深い意味を持っているのはどのような単語でしょうか?

学習のポイント

“bat” “bit” “but” “bet”などの単語は、母音の発音の仕方によっては聞き間違えてしまうことも珍しくありませんよね。英語学習の初心者にとっては母音はなかなか難しいものですが、この詩はそんな英語の母音を練習するのにも適しています

英語の単語の中には母音が変われば全く別の意味になってしまうもの多く、この詩にはまさにそういった単語が多く使われているため、練習に最適なのです。

詩の中の単語を見て、母音の韻が踏まれている単語の組み合わせやその配置などを確認してみましょう。

“Eating Poetry” マーク・ストランド作

詩の概要

マーク・ストランドはシュールなイメージと厳選された言葉を使って痛切なメッセージを伝えることで知られる詩人です。

“Eating Poetry”は1960年代に出版された、語り手が文字通り“詩を食べている”詩です。

詩のテキストと音声は Poetry Foundationからご覧ください。

詩のポイント

この詩を理解する上で最も大切なのは、おそらく詩を食べるという行為に込められた隠喩でしょう。幸せに詩を食べるという概念によって、詩人は何を表現したかったのでしょう。

また、詩で踏まれているや、その他の鋭いイメージにも注目したいところです。語り手の口から滴り落ちるインク、あきれ顔の犬、地団駄を踏む図書館司書…。ストランドがなぜこういった詩法を用いたのか、それらが詩の意味にどのような効果を与えているのか考えてみましょう。

学習のポイント

この詩は英語の動詞を勉強したい人にぴったりです。“snarl” “romp” “stamp”など、普段はあまり耳にすることのない動詞がたくさん使われています。

詩の中から全ての動詞を特定し、辞書を引く前に文脈をヒントにして意味を推測してみましょう。

また、この詩は現在形の構文を学びたい英語学習初心者にも適しています。ストランドの詩では句読点がきちんと使われ、ほとんどの文は短くて易しく、英語の構文で最もシンプルな形の「主語+動詞+目的語」が目立ちます。

“So you want to be a writer?” チャールズ・ブコウスキー作

詩の概要

チャールズ・ブコウスキーは20世紀では最も多作な作家の一人です。

“So you want to be a writer”という詩は真の作家をつくる要素を事細かに述べており、ブコウスキーのスタイルを表す代表例でもあります。

この詩はPoets.orで読むことができ、YouTubeでは音声も聴くことができます。

詩のポイント

この詩の最大の特徴と言えば、使われているイメージの数かもしれません。どのイメージが語り手のメッセージに最も大きな効果をもたらしているか、そしてなぜ作者はそのイメージを詩に使ったのか考えてみましょう。個人的なお気に入りは、作家がタイプライターの上に前かがみになって言葉を探すイメージです。

また、隠喩や直喩(“like”や“as”を用いて何かに例える手法)もたくさんあります。例えば、言葉が口からロケットのように出てくる(“out of your soul like a rocket”)なんて表現もありますね。

これらの詩法は繰り返しの表現とともに、この詩において強いトーンを作り出しています。語り口がとても力強く、このことからも語り手が自らのメッセージを確信している様子が伝わってくるようです。

学習のポイント

ブコウスキーの詩は、命令文疑問文仮定法などの文法を学びたい人にとっては究極の選択かもしれません。

この詩はこの3種の文の寄せ集めみたいなものなので、こういった文法を勉強中の人はこれらの文法を探してみたり、音声をもとにイントネーションを真似したりしてこの詩を役立ててみてください。

さらに、この詩には英語学習者に役立つボキャブラリーがたくさん使われています。“consumed”, “madness”, “gut”など、中級レベルの豊かな語彙を学べるはずですよ。

“Tell all the truth but tell it slant” エミリー・ディキンソン作

詩の概要

著名なアメリカ詩人エミリー・ディキンソンの名前は聞いたことがある人も少なくないのでは?ディキンソンの作品は彼女の死後1890年より出版されました。

“Tell all the truth but tell it slant”は彼女の作品の中でもひと際重要な詩です。「真実をまっすぐに伝えないこと」についての少し複雑な作品です。

この詩はPoetry Foundation から読むことができ、音声はYouTubeで聴くことができます。

詩のポイント

ディキンソンの詩にはユニークな要素がたくさんあります。まずは、色んな解釈ができるディキンソンらしい句読点“ダッシュ”の使い方でしょう。

また、詩の中の一部の単語が大文字にされていたり、隠喩が使われたりもします。そしてディキンソンの詩の意味を考える時は、読者は必ず詩そのものの形式について考えなければいけません。これは彼女が創作活動においてとてもこだわっていたことでもあります。

学習のポイント

他のディキンソン作品と同様、この詩は上級の英語学習者向けの内容です。

難易度の高い文章へのとっかかりとして、ハイレベルな読解練習に使うのに向いているでしょう。

事実が斜めに(slant)語られるとはどういうことなのか、ディキンソンの本当に意味するところについて考え、こういった考えが正しいのかどうか自分の議論を発展させてみてください。

このような難しい思想を使って練習すると、英語での議論を理解する力が付いたり、複雑な概念についてのディスカッションにも参加できるようになるはずです。

 

今回ご紹介した詩を楽しんでいただけたなら、ぜひこれからも詩の観賞を続けてみてください。英詩の世界は広大で、日々成長し続けています。もしかすると、次に有名詩人になるのはあなたかもしれませんよ!


Camille Turner(カミール・ターナー)は経験豊富なフリーランスのライター兼ESLの先生

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